Sammy Nestico
"A Portrait Of Sammy" Fenwood Music Inc.
 "Basie, Straight Ahead", "Have A Nice Day"を始め、Count Basie Orch.にNestico Soundを作り上げ、Big Bandの作・編曲家として押しも押されぬ存在のSammy Nesticoだが、なかなかこの「お勧めCD」コーナーに取り上げる彼自身のアルバムに巡り会うチャンスがなかった。だがこのCDは、さらに今までとはひと味違ったスタイルに路線変更をとげようとしている過程の、最高のメンバーによる最新(2004年録音)アルバムだ。

 全15曲中10曲がこのアルバムの為に新録音されたもので、更に10曲中3曲が標準的なBig Band編成(Horn Sectionが追加されている曲もある)で、残りの7曲にはStringが加わっている。そしてこの7曲がこのアルバムの聞き所である。Nesticoのオーケストレーションの特色は、難しいテクニック、無理に広い音域、不協和音を使わずに、常にトータルでのバランスを考えた心地よさを追求している。彼自身がライナーノーツに、"音楽はメロディー、ハーモニー、リズムの3つの基本的な要素から出来上がっているが、その中で最も重視しているのはメロディーである"と記しているように、どれも口ずさむ事が出来るような魅力的なメロディーばかりで、更に全ての曲がハーモニーとリズムにしっかりブレンドしており、どの要素が欠けてもこんなに素晴らしいサウンドは生まれないであろう。

 また参加メンバーも凄い。Gary Foster, Pete Christlieb(ww), Gary Grant, Wayne Bergeron(tp), Andy Martin(tb), Alex Acuna(perc)等がずらりと並んでいるが、主にソロをとっているのはTom Scott(Ts, E.W.I.), Warren Luening(Tp), Dick Nash(Tb)等のベテランの実力者達というところも、彼が如何にミュージシャン達に尊敬されているかが伺える。1曲目の「Dark Orchid」ではコーラスも加わっているが、コーラスといっても、その中の一人はシンガーズ・アンリミテッドで活躍し、現在 Bob Florence バンドのリード・アルトを努める Don Shelton が担当しているぐらいだから、そのセンスの良さは保証付きだ。但し5曲目の「Swingin' On The Orient Express」の中国風なイントロはなんと言ってよいか?

 6と12〜15は既に発売されている音源と同じもので、「Lisette」と「Out Of The Night」 は 2000年に Quincy Jones との双頭バンドのアルバム「Basie & Beyond」に収録されたのと全く同じ。「A Warm Breeze」 はドイツの SWR Big Band が2004年に録音した Sammy Nestico 作品集より。「Satin 'n Glass」は1985年にカナダで Rob McConnell が抜けた Boss Brass のメンバーで録音されたもの。「88 Basie Street」は彼自身の「Night Flight」というアルバムに収録されたもの。

 こうして1枚通して聴いてみると、80歳近くの高齢になるはずの Sammy だが、衰えるどころか益々洗練されてくると共に、新鮮なアイデア、サウンドが泉のごとく湧き出てくるのには驚かされる。Sammy Nestico はもう聞き飽きたという方も、この1枚は買って絶対損のない、彼の魅力がいっぱい詰まったアルバムである。(2006/1/31)


Chris Walden
"No Bounds" Origin 82463
 ドイツ出身で作・編曲家、トランペッター、Chris Waldenの3枚目のBig Band Album。彼の作品はどちらかと言うと、ジャズよりもポップスが多く、TVや映画音楽を得意としている。今までにMichael Bolton, Christoper Cross, Olivia Newton-John, Barbra Streisand, Diana Krall, John Pizzarelli等に作品を提供し、グラミー賞にノミネートされた事もある。

 1999年からはロサンゼルスのトップ・ミュージシャン(Wayne Bergeron, Carl Saunders, Kim Richmond, Andy Martin, Gregg Field等々)からなる自身のBig Bandを結成し、度々活動を始めた。前作の「Home Of My Heart」と言う、Star Warsのテーマや、Cherokee, Stolen Momentsを含むアルバムは、お世辞にも良いとは言えない内容だったが、この新作では一皮も二皮も剥けた素晴らしいアルバムだ。

 1.「Winter Games」は、カナダ人のプロデューサー、作・編曲家David Fosterの作曲した、1988年のカナダ、カルガリー・オリンピックの公式テーマ曲。出だしのブラスのアンサンブルから新鮮なサウンドがいっぱいで、このアルバムの成功を暗示している。2.はお馴染みのディズニーの「星に願いを」。いじくり回し過ぎず、しかもしっかり自分のサウンドを出しているところに感心させられる。Kim Richmond(as)のアレンジの意図をしっかり理解したソロが素晴らしい。3.はこのアルバムのタイトルになった彼のオリジナル。この曲ではホルンやストリングスも加わり、見事な音の絵物語を繰り広げる。ゲスト・ピアニストのFrank Chastenierの控えめだが、内容の濃いソロが印象的だ。4.「Pepple Will Say We're In Love」はロジャース、ハーマーステインのコンビによるスタンダード・ナンバー。複雑なのにスッキリしたリズム・パターンにゲスト・ヴォーカリストのTierney Suttonが絡んで行く。5.はトランペッターのTill Bronnerの作曲で、彼自身ををフィーチュアしたバラッド。彼も今年35歳のドイツ出身。日本でも「Love」というアルバムで、1999年のスイングジャーナル誌選定<GOLD DISC>に選ばれたので、ご存知の方も少なくないだろう。この曲を聴くだけでも、このアルバムを買う価値がある。

 6.「In The Doghouse」、7.「Try Harder」はどちらもChrisのオリジナルで、4ビートのオーソドックスな曲。6.で本人のフリューゲル・ホーンのソロが聴ける。8.はチャーリー・チャップリン作曲で有名。9.と11.はどちらもディズニーのヒット曲。おなじみのメロディー、ハーモニーがどんどん展開し、新しい世界に引き込んで行く。どう処理されているかは聴いてのお楽しみ。10.はChrisが90年代半ばにドイツのテレビに書いたオリジナルで、チェロ(電気の)がフィーチュアされる。

 今年も既に6分の5を過ぎようとし、たくさんの作品を聴いてきたが、これは今年最高とも言える、久しぶりに現れたしっかり自分のサウンド、匂いをもった、本当に素晴らしい才能を持った作・編曲家のアルバム。演奏も録音もとても良く、全てのビッグバンド・ファンに推薦します。
(2006/10/21)

このページのトップに戻る↑