9でも書いたように、ダウン・ビートがとても大切な事は充分に解っているのだが、それでもフレーズが揃わないホーン・セクションをよく見かける。そんなセクションはたいてい、その前のフレーズの切りが揃っていない場合が多い。例えば前の音符が全音符の場合、▼4拍いっぱい伸ばして息継ぎをしない。▼4拍目の頭で止めて、素早く息継ぎをする。▼4拍目の直前で切って、充分に息をとる。等々選択しはいろいろある。これを揃える事によって、次のフレーズの出だしのタイミングがとれるし、強弱やアタックの強さも合わせやすい。
何回も練習しているのに、いつも揃わない時は、セクション・リーダーが音切りのタイミングの指示を出す事によって、容易に頭を合わせる事が出来る場合が多々ある。但し7でも書いたように、早い時期から細かい指示を出し過ぎると、指示がないと合わせられなくなってしまうので、適当な時期に、適切な指事を少なめに出すことがとても大切だ。またそれは、他のセクションのフレーズや曲相をよく考えて、ただ合わせやすいだけの為の指示であつてはならない。(2002/11/20)
ジャズの楽譜には、クラシックやポピュラー音楽に較べ、シンコペーションがたくさん出て来る。初心者にとっては、これはなかなか取っ付きにくく曲者だが、慣れればそんなに難しくないどころか、結構心地良いものである。
ところが意外にも中級以上のバンドで、シンコペーションは軽くこなしているのに、リズムが落ち着かず、更にフレーズが詰まって、息苦しくなってしまうような演奏によく出会う。このような各バンドに共通する原因の一つに(もちろん全部ではない)、ダウン・ビート(1拍目や3拍目)の不正確さがあげられる。たいてい、このダウン・ビートが突っ込んでしまうのだ。この為、きっちり決まる部分がなくなり、シンコペーションの印象が薄くなり、演奏にメリハリが無く、リズムが落ち着かない。特にダウン・ビートが休符の時は要注意。こんなベーシックな事が、演奏の善し悪しを大きく別ける場合が多い。(2001/7/13)
アップ・テンポの曲をスタートする時に、リーダー(あるいはドラマー)が2拍、4拍目をやたらに強調したカウントを出す為に、上手くスタート出来ないバンドが少なくない。この場合最も大切な事は、テンポがはっきりと適切に伝わる事であり、当然1拍、3拍目をはっきりさせた方がより解りやすいし自然だ。また奏者も無理して?2拍、4拍目に足を踏まないで、遠慮なく(誰に対して?)1拍、3拍目に足を踏むべきだ。その方が自然であり、より演奏しやすい。確かにジャズの場合、2拍、4拍目にアクセントが付く場合が多いが、あくまでも1拍、3拍目があっての2拍、4拍目の強調である。
IAJE(国際的なジャズ教育者の集まり)の最新版の会報に、John Clayton (クレイトン・ハミルトン・ジャズ・オーケストラのリーダー)氏が会員の質問に答えてこんな一文を載せている。”1拍、3拍目に足を踏みなさい。2拍、4拍目は大切だが、1拍、3拍目はもっと大切なママとパパのビートなのだから。コード進行だって1拍、3拍目で変わるだろう。ジャズのビートはマーチから来ているんだ。行進する時は1拍、3拍目にあわせて足を踏むだろう”
彼はカウント・ベィシー・オーケストラに在籍していたが、ある時そのホーン・セクションを見たら、彼等は全員、1拍、3拍目のオン・ビートで足を踏んでおり、ホーン・セクションはその事に疑問を挟んだ事は一度もないそうだ。現在でも状況は全く同じで、1拍、3拍目で拍子をとった方が、リズム感を感じやすいと結んでいる。
どうぞ、安心して1拍、3拍で拍子をとって下さい。(2000/6/17)
いろいろなバンドのリハーサルにつき合ってみて、細かい指事が多すぎるのが気になった。特に、初めての曲をリハーサルする時に、まだ一人ひとりが、ほとんど自分のパートを演奏出来てないのに、リーダーが細かいアンサンブルの指事(4分音符の長さや、アクセント、レイバックする等)を出す場面に出会って面喰らってしまった。奏者は自分のパートが演奏出来てない時には、当然まわりの演奏を聞く余裕がないわけで、この時期の細かい指事は、ますます混乱を引き起こすだけだろう。
初期の練習では、楽譜上の細かい指事よりも、フィーリングを大切に、曲全体の魅力を、耳や体で感じるように心掛けよう。そうすれば、自然にバンドのカラーが出て来るし、次の曲にも応用出来る。もし早い時期に指事を出し過ぎると、次の曲でも、細かい指事がないとどうして良いか解らない。また、細かい部分を気にするあまり、全体の盛り上がり、流れがおろそかになりがちだ。リーダーはバンドの仕上がりにあわせて、適当な時期に、適切な指事を少なめに出すことがとても大切だ。親が子供にしょっちゅう文句を言うのは、子供の為にならないし、車でドライブする時、信号や交通標識が多すぎると、途中の景色や会話が印象に残らないのと同じです。(ちょっと違うか?) でも、コンサートの数日前になっても未だ合わない時は、ガツンと指事を出すのは当然ですよ。(1999/10/7)
先日、某アマチュア・ビッグ・バンドのリハーサルを覗かせてもらったら、生憎ドラマーが欠席でドンカマ(メトロノームをアンプで増幅したような物)を使って演奏していた。その演奏は恐ろしくスイングしていない。メンバーに聞いてみると、ドラマーがいてもいつもドンカマを使っているとの事。リズム(リズム・セクションという意味ではない)が走ったり、遅れたりするのを避けるため使っているのだろうが、正確さばかりに気をとられ、もっと大切なスイングする事を忘れてしまっているようだ。メトロノームを使う練習は、教則本や新しい曲に挑戦する場合の初期の "個人練習" にはとても大切だが、使い過ぎには充分気をつけたい。僕達のバンドでは逆に、ドラマー抜きでホーン・プレーヤーだけでアンサンブルの練習をすることがある。この方が、より正確なリズムでスイングする為には効果がある。どうぞ貴方のバンドでも一度試してみたらどうだろう。(1998/12/20)
皆さんはアンサンブルの時、アティキュレーション・マークのアクセントとマルカートの違いについて意識して演奏していますか? クラシック音楽の場合はともかくジャズでは、世界共通のはっきりした約束はありませんが、メディアム・テンポの4ビートの曲では、だいたい次のような解釈が標準とされているようです。
マルカートは
M2 のような長さとフィーリングで
アクセントは
M4 、または M5 のように
要約すると、マルカートは強い長めのアタックを伴って、ひとつひとつリズムを強調するように演奏する(M2 の例のように音符と音符の間に少し隙間が出来る位いに。管楽器の奏法では、"Tah-" というよりも "Dat" "Dot" といった感じ。 "Dot" の "t" は飲み込む音で、発音しないのは言うまでもない)。余談だがバークリー音大では、マルカートの付いた2分音符を「レスターヤング・ハーフノート」という、とんでもない名前で呼んでいた。
アクセントは強いアタックを伴うまでは同じだが、そのあと余韻を残すように音を減衰させて演奏する。音楽の種類やテンポ、フィーリング、その他の要素によって色々変化することが多い。(1998/2/15)
先日、某アマチュア・ビッグ・バンドで活躍中のY氏より、次のようなメールをいただきました。皆様にも共通する身近な問題と思えましたので、同氏の許可を得て、ほとんどそのままワンポイント・アドバイスとして使わせていただきました。
Y氏からのメール
アップテンポの曲の場合は、8分音符のハネ具合が比較的イーブンに近づいてくる事が多い(これがまず前提です)と思うのですが、そう言った曲をテンポを落として練習する場合は、その落としたテンポの曲として練習してゆくものでしょうか。それともあくまでハネ具合は最終テンポに基づいたもので、テンポだけ落としてゆくのでしょうか。
例えば、Donna Leeを四分音符100位で、フルバンであわせの練習をするとして、イーブンに近い歌いで合わせてゆくのか、そのテンポの、例えばSatin Doll的スイングで練習するのか、といったことです。あるいは、上記で「これがまず前提です」と断りましたが、アップテンポ=イーブンというのがそもそも正しくないのかも知れませんが…。イーブンに聞こえるだけで、あくまで演奏する方としてはスイングさせるべきであるのかも知れませんし。曲想によって勿論変わるのですが。
変な質問ですがお答えいただけると幸いです。
内堀からの返信
メールを有難うございました。さて、ご質問についてですが、アップテンポの曲をゆっくりしたテンポで練習する場合の、目的が非常に大切だと思います、大抵の場合その目的が「タイミングやフィーリングを合わせる為」ではなく、本当は「各自が個人的に練習すべき技術的なことを、一人ひとりだとやらないので、皆で一緒に練習しましょう」という場合が多いと思います。
例えのように、もしDonna Leeを目的のテンポで各自が演奏出来るのであれば、あまり遅いテンポでアンサンブルの練習をする必要がない訳です。また、タイミングやフィーリングを合わせる為の練習なら、やはり、あまりゆっくりしたテンポでやっても、それほど効果がないでしょう。
しかし現実には、こういった練習(テンポをおとした)をよく見かけますし、私達のバンドでも時々やります。その場合、目的をよく考えて、タイミングやフィーリングの練習ならば、少々の音のミスには目をつぶってもよいでしょう。もちろんその後で、さらに個人的な指の練習は必要ですが。もし目的が指の練習にあるならば、あまり深く考えないで、Satin Doll的スイングでよいので、楽しくやることが大切です。
メールにありましたように、例えばDonna Leeを、4分音符100位でフルバンドで練習をするとした場合、4分の4拍子でなく、サンバのようなつもりで、2分の2拍子のフィーリング(In Two)で演奏すると少しはマシだと思います。少なくとも、足は4つに踏まないで下さい。こうすれば、少しは実際のテンポのフィーリングに近ずくと思いますので。
とりとめなく書きましたが、あまり難しく考えないで、アップテンポ=イーブンというよりも、アップテンポになると、3連符のように演奏するには速すぎるので、自然とイーブンに近くなると思った方が、より自然だと思います。だから、目的を各自が理解していれば、Satin Doll的スイングで練習してもかまわないし、曲によっては、かえってその方が自然だと思います。
多分答えになってないと思いますが、音楽ってけっして答えが一つでないというところが、またいいのでして! すみません。
以上が二人のやりとりでした。皆様も御意見、御質問がありましたらメールでどうぞ。(1997/12/22)
近年、各地でアマチュア・ビッグ・バンドの活動が大変盛んですが、その一方、普段の練習への出席率や練習内容は、どこもなかなか大変なのが実情なようです。そこで出席率の向上はさておいて、練習内容の方はなんとか工夫して、効率的にやりたいものです。
各バンドとも時間がないせいか、いきなり次のコンサート用の曲にとりかかり、細かいフレーズのタイミングやピッチをあわせる事に、多くの時間を割いているようですが、これでは永い目でみたら、けっして効率的とはいえません。なぜなら、その細かい約束ごとは、その曲には有効でも、他の曲には応用が効かないからです。やはり最初の15分位(長時間やる必要はない)は、皆でウォーミングアップを兼ねて、普段怠りがちな基礎練習することも、とても大切です。(この間に遅れて来たメンバーが揃うかも?)
さてその方法ですが、こんなのはどうでしょうか。
今、練習している曲や過去に演奏した曲の中の、ベーシックな部分を使って、ロングトーン、タンギング、タイミング、ハーモニー、ピッチ、バランス、そしてインプロヴィゼーションまで同時にやって、時間の節約をしようという試みです。
次の楽譜M-1は、あるベーシックなブルースの一部分です。これを使った練習方法を考えてみます。

まずこの楽譜を各パートに移調して割り振って下さい(サックスはこのまま5声で、トランペットは一番上の音を1stと3rd、次の音を2ndと4thで、トロンボーンは下の3声を1st、2nd、4thで、3rdは一番下の音の1オクターブ上というように)。
そして最初はゆっくりしたテンポ(4分音符=80位)で、M-2の様にロングトーンをします。この時、音色、ピッチ、ハーモニー、バランス等に神経を集中して下さい(M-2の様にクレッシェンド、デクレッシェンドを付けると更に効果的です)。この時リズム・セクションは、ソフトなボサノヴァのリズムがあうでしょう。

さて次は、同じM-1の音を使って、M-3、M-4、M-5の様なリズム・パターンで演奏します。


この場合には更にタンギングやタイミングにも、注意して下さい(意外とシンコペーションより1拍目のダウン・ビートがあいにくい)。この場合のリズム・セクションは4ビートで付き合うのが良いでしょう(特にドラムスは、フィル・インの練習も兼ねるとよい)。曲によって、テンポやリズムも色々変えてみて下さい。(但し速くなりすぎないように)
更に、皆でこのリズムで演奏しながら、順番に1コーラスずつアドリブをまわしてみましょう。普段、皆の前でアドリブする自信のない人も、この際挑戦して(させて)下さい。それでもまだ、一人ずつだと恥ずかしいとしりごみする人がいる時は、二人ずつでやってみて下さい。これなら意外と恥ずかしくなく出来るものです(更に時間の節約にもなりますし)。(1997/12/2)
2 セクションごとのアンサンブルはとても良いのに、バンド全体としてはバラバラに聞こえてしまう。
各セクションごとのアンサンブルはとても良くまとまっているのに、他のセクションとの関係が悪いのか、全体としてはバラバラに聞こえてしまう惜しいバンドがかなりあります。特に Bill Holman のアレンジように、いくつかのラインが複雑に絡み合って進行するフレーズで目立ちます。
これらの原因は、自分のプレイに頭がいっぱいで他人のプレイを聞く余裕がない場合と、全くその事に気が付いてない場合とがあるようです。前者の場合は、いずれ余裕が出てくれば解決する可能性があるので、まだ救われますが、後者の場合はどうしたら良いでしょうか?
私のお勧め法は、練習の時、思いきっていつもと全く配置を変えて演奏してみるのです。例えば、2nd T.Sax と1st Tpt と 4th Tb がならんで、その後ろに1st tb と 3rd A.Sax と 3rd tpt が並ぶというように、通常のセクションごとの配置をバラバラにして演奏してみるのです。
この方法によって、否応無しに自分のフレーズと他人のフレーズの関係を自覚させられ、もっと神経を使った演奏をしなければとか、今まで、自分がいかに他人のプレイに頼っていたか反省させられる等々、思わぬ功罪もあります。
ぜひ一度、あなた達のバンドでも試して下さい。(但しこの練習法は、たまにやるから効果があるのと、コンサートの直前や、あまり初期の段階にはむいていません。)
え! やってみたけど少しも良くならない? うーん、その場合はもっと今まで以上にセクション練習をやってください。(1997/11/15)
1 Maj7のコード上で、トニックの音がメロディーにきた時の問題点。
最近、アマチュア・ビッグ・バンドのコンサートへよく出かけるのですが、Maj7のコードでトニックの音がメロディーにきているのを時々見かけます。(特にエンディングの一番最後のフェルマータの付いた音に多い)
例えば、C Maj7のコード上で、C の音がメロディーにきている場合、メロディーのC 音と Maj7のB 音が反発しあって、とても不安定な気持ちの悪いサウンドがします。
この解決法としては色々ありますが、一番簡単なのはコードを C Maj7 から C6 や C(add9) に変えるとすっきりします。但し曲のイメージ上、 C6 や C(add9) に変えにくい場合は、メロディー音を思いきって5度の音(この場合 G 音)に変えると良いでしょう。もちろん、Maj7(B) や 9(D)の音でもよいのですが、その場合、その音が唐突に感じられないように、その前のフレーズやコードを少々手直しする必要にせまられる場合が多いようです。(1997/10/30)